2013/12/15
さて、今日は、少しマニアックな話です。
中小企業においても海外での業務が
当たり前になってきつつあります。
◆「海外出張」と「海外派遣」と「現地での採用」の違い
国内法 社会保険と労働保険の適用について
お話をしたいと思います。
本日のポイントは、
1.海外(現地)で採用し、現地で勤務する場合、
次のように区分することができます。
その1.
現地人(現地の日本人含む)を、
海外の法人が雇い主となって
採用した場合は、国内法の適用無し
ア)社会保険も労働保険も加入できない。
その2.
現地人(現地の日本人含む)を、
日本法人が雇い主となって
採用して、現地に勤務する場合は、
ア)社会保険は、加入が必要。
イ)ただし、労働保険は加入できない。
その2の場合、同じ国内法であるにもかかわらず
ア)社会保険は加入、イ)労働保険は、加入できない。
という、おかしな事態が生じます。
これは、いかがなものかと思いますが。
◆まず、海外出張と海外派遣の違いから
今年1月16日に起こった
「アルジェリアのテロ事件」では、
「日本法人」に「日本で採用」され、
現地で勤務している
社員さんが犠牲となりました。
仕事中に犠牲となった場合
労災保険の適用があるのか、
一つ考えなければならないことです。
具体的に言うと、
「海外派遣者と海外出張者の違い」
「特別加入制度(海外派遣者用)」
についてですが、
以下のとおりです。
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1.海外出張とは
「単に労働の提供が海外の場にあるにすぎず、
国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の
指揮に従って勤務する」
と定義されます。
(厚生労働省「特別加入制度(海外派遣者用)」パンフレットより。)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html
⇒「海外出張」の場合は、日本法人の加入している
労災保険が使えます。
2.海外派遣者とは
「海外の事業場に所属し、その事業場の使用者の
指揮に従って勤務する」と定義され、(同上 パンフより)
「海外派遣者」の場合は、日本法人が加入している
元々の労災保険は使えません。
別途、「海外派遣者用」向けの制度に
事前に加入しておかなければなりません。
⇒労災保険制度の特別加入制度(海外派遣者用)に加入が必要です。
また、紛争等による巻き添え災害については、
アルジェリアの事件は、
政府施設のプラント建設工事であり、
それがテロの攻撃目標となったことから
発生してしまった事件ですので、
「海外派遣者の業務上の災害」と取扱われる。
(要約以上です。)
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◆今日の本題はココからです。
よって、海外派遣者、海外出張者のいずれでも
手続きをしっかりと行ってさえいれば、
労災保険制度を利用することができますが、
現地人(現地の日本人含む)を採用し現地で勤務する場合は、
1.現地法人が雇い主になった場合
2.日本法人が雇い主になった場合
で、取り扱いが異なります。
結論は、上で述べましたので
ここからは、
2.日本法人が雇い主になった場合の解説です。
【社会保険(厚生年金・健康保険)】
「国内の支店で採用した者」と同じで、
たまたま、海外支店で採用しただけである
との立場のため加入する必要がある。とのこと。
【労働保険(労災保険・雇用保険)】
国内での勤務実績が一度もない場合は
労働保険の対象外で、
特別加入制度(海外派遣者用)は使えない。
もちろん海外出張でもない。
また雇用保険にも加入できない。との回答。
国内で、勤務実績(研修等でも可)があり、
その後に、海外へ「派遣」されるのであれば
特別加入制度(海外派遣者用)の利用ができる。
とのことです。
管轄が、旧厚生省、旧労働省とはいえ、
統一した運用が必要だと思いますが、
企業運営の実務上は気をつけておきましょう。