2012/8/21
平成24年8月3日に
改正労働契約法案※は参議院本会議にて
政府原案通り可決、成立しました。
※労働契約法は、労働契約についての基本的なルールを
取りまとめた法律です。
国会での成立を受けて、8月10日付で、
厚生労働省から次のような発表がされました。
「労働契約法の一部を改正する法律」
◆改正された内容は、以下の3点です。
1.有期労働契約を一定の条件の元に、期間の定めのない労働契約へ転換する
2.有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化)について
3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
1.の概要は、以下のとおりです。
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有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合(※1)は、
労働者の申込みにより、無期労働契約(※2)に転換させる仕組みを導入する。
(※1) 原則として、6か月以上の空白期間(クーリング期間)があるときは、
前の契約期間を通算しない。
(※2) 別段の定めがない限り、申込時点の有期労働契約と同一の労働条件。
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そもそもは、不安定な有期雇用の長期化の防止が
目的だったと思われますが、思わぬところに影響が出てきます。
◆私が考える問題点
私が考える問題点は、60歳定年後に、1年ごとに契約を更新して、
65歳まで再雇用する場合※においても、
今回の労働契約法の改正が適用されてしまうところです。
※平成25年4月以降は、65歳までの再雇用(継続)制度が義務化されます。
(なお、65歳義務化は、高年齢者雇用安定法に定められています。
この法律も今後、改正が予定されていますが、今回は、省略します)
●60歳から再雇用がスタートして、
1年×5年で、65歳を迎える従業員さんが居る場合、
会社が「この人は、もう少し、残って欲しいから、
引き続き1年契約を」と考え契約を更新する
ケースにおいて、
この従業員さんから
「期間の定めのない契約に変更してほしい」と申出があった場合、
契約が、自動的に「期間の定めのない(無期)契約」に転換してしまうのです。
一旦、60歳で「定年を迎えた」従業員さんに、
1年更新を繰り返して5年を超えて働いてもらった場合に、
上記の申出があったら、契約が「無期契約」に変わるなんていう、
おかしな話が出てきます。
その後、この従業員さんには、
いつまで働いてもらうことになるのでしょうか?
(再雇用者の「再定年」ルールを設定することになるのか???)
また、65歳以上の方に、
6カ月以上のクーリング期間を設けるのも
現実的ではないと思われます。
◆問題点その2
上記のような事態を想定すると、
会社側は、65歳を超えても「必要な人材」と思っていても
65歳時点で、「雇止め」せざるを得なくなる。
企業と労働者の自由な関係を、法律によって
阻害、遮断する可能性が出てきました。
もちろん、そもそもの改正のターゲットである
有期労働契約で働いている60歳未満の人が、
例えば、4年6か月で「雇止め」されるケースなどは、
(法改正の意に反して)出てくると思います。
今回の改正法には、例外規定が存在しないようですが、
60歳以降の契約更新は、適用除外とするべきだと考えます。